動的ストレッチのやり方と注意点|パフォーマンスを引き出す効果的な準備法

「ストレッチはした方がいいの?」
そう感じる方も多いですが、実は“やり方”によって効果がまったく変わります。特に運動前におすすめなのが「動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)」です。
これは、筋肉や関節を動かしながら行うストレッチで、筋温を上げ、神経伝達を活性化させ、パフォーマンスを最大化する準備法。
16年にわたりプロアスリートから一般の方までを指導してきた経験から、この記事では「正しい動的ストレッチ」についてわかりやすく解説します。
動的ストレッチの効果・やり方・注意点を運動科学の視点から解説します。
トレーニング前の準備を見直したい人、ケガを防ぎながら動ける体を作りたい人は、ぜひ最後まで読んでください。
動的ストレッチとは?|静的ストレッチとの違いを理解する

動的ストレッチの定義
動的ストレッチ(Dynamic Stretching)とは、筋肉を動かしながら伸ばすストレッチ法のこと。
反動を使わず、関節の動きを伴って筋肉を伸ばし、筋温・心拍・神経活動を高めます。
静的ストレッチとの違い
| 種類 | 方法 | 効果 | 実施タイミング |
|---|---|---|---|
| 動的ストレッチ | 動きながら伸ばす | 筋温上昇・神経活性 | 運動前 |
| 静的ストレッチ | 一定時間キープする | 柔軟性向上・筋緊張緩和 | 運動後・就寝前 |
動的ストレッチの科学的効果

1.筋温の上昇で筋出力が上がる
筋肉が温まることで収縮スピードと出力が向上します。
研究では筋温が1℃上昇するだけでパフォーマンスが2〜5%向上することが示されています。
2.神経伝達速度の向上
動的ストレッチは「脳 → 筋肉」への信号伝達をスムーズにします。
反応速度やバランス感覚が高まり、競技パフォーマンスに直結します。
3.関節可動域の拡大
体を動かしながら行うため、関節周囲の滑液(潤滑液)が温まり、スムーズな可動が可能になります。
これにより、フォームの安定性や筋肉の伸張性も向上します。
4.ケガ予防と姿勢改善
筋温と柔軟性を高めることで、肉離れや捻挫のリスクを軽減。
さらに、姿勢を整える作用もあり、肩こり・腰痛対策としても有効です。
動的ストレッチの基本的なやり方

実施の基本ルール
- 呼吸を止めずにリズミカルに動く
- 無理に反動をつけない(バリスティックストレッチは別)
- 1種目あたり20〜30秒、2〜3セットが目安
- 「心拍が少し上がる」程度がベスト
動的ストレッチの実践メニュー例
| 部位 | 種目名 | 方法 | 回数・時間 |
|---|---|---|---|
| 下半身 | レッグスイング | 前後・左右に脚を振る | 各10〜15回 |
| 下半身 | ランジツイスト | 脚を前に出して上体をひねる | 各8〜10回 |
| 上半身 | アームサークル | 腕を前後に回す | 各10回 |
| 体幹 | トランクローテーション | 体を左右にひねる | 20〜30秒 |
| 全身 | ハイニー/スキップ | 軽い有酸素的動作 | 30〜45秒 |
これらを組み合わせることで、全身を効率よく温めることができます。
動的ストレッチを取り入れるタイミングと順序
ウォーミングアップ内での位置づけ
ウォーミングアップの流れにおける動的ストレッチの位置づけは以下の通り。
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 一般的ウォームアップ | 軽い有酸素運動(ジョギングなど) | 体温を上げる |
| ② 動的ストレッチ | 関節・神経の活性化 | 動作準備 |
| ③ 特異的ウォームアップ | 競技・トレーニング動作 | 実戦適応 |
動的ストレッチは、「体を温めたあと」「本番動作の前」に行うのが効果的です。
動的ストレッチで注意すべき3つのポイント
1.反動をつけすぎない
動きを大きくしようと反動を強くすると、筋肉や腱を痛める可能性があります。
「伸びて気持ちいい」程度で止めるのが安全です。
2.スピードを急に上げない
最初は小さな動きから始め、徐々に動作スピードを上げていきましょう。
特に朝や寒い時期は、筋温が低いため焦りは禁物です。
3.個人の柔軟性に合わせる
可動域には個人差があります。無理に大きく動かすより、「スムーズに動ける範囲」で行う方が効果的です。
時間帯・目的別の動的ストレッチ活用法
朝トレーニングの場合
朝は体温が低く、筋肉が硬い傾向にあります。
軽めのジョギング後に、動的ストレッチを長め(5〜10分)に行うとパフォーマンスが上がります。
筋トレ前の場合
動的ストレッチで関節の動きを整えた後、メイン種目の軽負荷セットを行うことで神経がスムーズに働きます。
特に下半身トレーニング時はランジツイストやレッグスイングが効果的。
スポーツ前の場合
競技特性に合わせて動作を選びましょう。
- サッカー → ハイニー・ラテラルランジ
- 野球 → アームサークル・トランクローテーション
- 陸上 → スキップ・ダッシュ準備動作
動的ストレッチと静的ストレッチの使い分け方

運動前は「動的」、運動後は「静的」
- 運動前:動的ストレッチ → 神経と筋肉を活性化
- 運動後:静的ストレッチ → 筋緊張を緩和し回復促進
この2つをセットで行うことで、パフォーマンスと回復を両立できます。
NG例|ストレッチの誤用
- トレーニング前に長時間の静的ストレッチ
- 反動の強いバウンドストレッチ
- 痛みを感じるほどの可動域チャレンジ
どれも筋出力低下やケガにつながるリスクがあります。
まとめ|動的ストレッチは“動ける体”をつくる準備の第一歩
動的ストレッチは、パフォーマンスを引き出すための「スイッチ」です。
筋温を上げ、神経を活性化し、関節を動かすこの数分間が、ケガを防ぎ、最高の動きを生み出します。
ポイントは以下の通り:
- 体を動かしながら伸ばす
- 呼吸とリズムを大切に
- 反動を使いすぎずスムーズに
- 運動前に5〜10分取り入れる
トレーニングの質を上げたい人、ケガを減らしたい人は、今日から“動的ストレッチ習慣”を取り入れてみてください。
読んでくださり、ありがとうございました。次回は「静的ストレッチの正しいやり方と回復への効果」を解説します。
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