静的ストレッチのやり方と回復への効果|筋肉を整える“クールダウン”の科学

トレーニング後、「ストレッチはなんとなくやっているけど、効果がよくわからない」という声をよく耳にします。
実は、運動後に行う静的ストレッチ(スタティックストレッチ)には、筋肉の回復や姿勢の改善といった大きなメリットがあります。
運動科学の視点で見ると、トレーニング前の動的ストレッチが「動かす準備」だとすれば、静的ストレッチは「整えるリセット」。体の緊張をほぐし、次の動きに備えるための重要なプロセスです。
本記事では、パーソナルトレーナー歴16年の筆者が、静的ストレッチの効果・やり方・注意点をわかりやすく解説します。
“ストレッチの質”が翌日の体調を左右することも少なくありません。トレーニング後のケアを見直したい方、疲労を残さずベストなコンディションを維持したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
静的ストレッチとは?|筋肉を「休ませる」ためのストレッチ

静的ストレッチの定義
静的ストレッチ(Static Stretching)は、筋肉を一定の長さで伸ばし、そのまま静止してキープする方法です。
主に運動後やリラックス時に行い、筋肉をクールダウンさせて柔軟性を高めます。
動的ストレッチとの違い
| 種類 | 方法 | 主な目的 | 実施タイミング |
|---|---|---|---|
| 動的ストレッチ | 動かしながら伸ばす | 神経活性・筋温上昇 | 運動前 |
| 静的ストレッチ | 伸ばして止める | 筋弛緩・回復促進 | 運動後 |
動的ストレッチが「体を起こす」なら、静的ストレッチは「体を休ませる」。
両者を使い分けることで、トレーニング効果が大きく変わります。
動的ストレッチについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
▶ 動的ストレッチのやり方と注意点|パフォーマンスを引き出す効果的な準備法
静的ストレッチの科学的効果

1.筋肉の緊張を緩和し、疲労回復を促す
トレーニング直後の筋肉は、収縮した状態で固くなっています。
静的ストレッチでゆっくり伸ばすことで、筋緊張が緩み、血流が促進され、疲労物質(乳酸など)の排出を助けます。
2.筋肉の柔軟性を高め、関節可動域を拡大
定期的に行うことで、筋肉や腱の伸張性が向上し、可動域が広がります。
柔軟性が上がると、姿勢の改善や動作の安定性にもつながります。
3.副交感神経を優位にし、リラックス効果を得る
ゆっくりした呼吸とともに筋肉を伸ばすことで、自律神経のバランスが整い、心身が落ち着きます。
寝る前のストレッチにも最適です。
4.ケガ予防と翌日のコンディション維持
筋肉の緊張を残さないことで、次回のトレーニング時にスムーズに動ける体になります。
特にハードトレーニング後は、静的ストレッチを入れるかどうかで翌日の“軽さ”が違います。
静的ストレッチの正しいやり方

基本の実施ポイント
- 呼吸を止めずにゆっくり伸ばす
- 「痛気持ちいい」程度で20〜30秒キープ
- 無理に反動をつけない
- 各部位を2〜3セット行う
JUN気持ちよく伸ばすようにしてください!
全身のストレッチメニュー例
| 部位 | 種目名 | 方法 | 時間/回数 |
|---|---|---|---|
| 首 | サイドネックストレッチ | 頭を横に倒し首筋を伸ばす | 20〜30秒 |
| 肩 | アームクロスストレッチ | 腕を体の前に引き寄せる | 20〜30秒 |
| 背中 | キャット&カウ | 背骨を丸めて伸ばす | 5〜10回 |
| 太もも前 | クアドストレッチ | 片脚を後ろに引き膝を曲げる | 各20〜30秒 |
| 太もも裏 | ハムストリングストレッチ | 座って前屈 | 各20〜30秒 |
| ふくらはぎ | カーフストレッチ | 壁を押して足首を伸ばす | 各20〜30秒 |
これらをトレーニング後に行うだけで、翌日の筋肉の“張り”が格段に軽くなります。
静的ストレッチを行う最適なタイミング
運動後のクールダウン時
静的ストレッチは、心拍数が落ち着き始めたタイミングで行うのが理想です。
トレーニング直後の激しい状態ではなく、「少し息が整ってきた頃」に行うと効果が高まります。
入浴後・就寝前のストレッチも効果的
お風呂上がりは筋肉が温まり、伸ばしやすい状態です。
睡眠前の静的ストレッチは、疲労回復と睡眠の質向上にもつながります。



リラックスできるよ!
静的ストレッチの注意点


1.運動前に行わない
運動前の静的ストレッチは、筋出力を一時的に低下させることが研究で示されています。
運動前は動的ストレッチで「温め」、静的ストレッチは運動後に「整える」。
2.痛みを感じるほど伸ばさない
「伸ばせば伸ばすほど良い」は誤り。
筋肉や腱を傷めるリスクがあるため、「気持ちよく伸びる」程度に留めましょう。
3.呼吸を止めない
ストレッチ中に呼吸を止めると、筋肉が緊張し伸びにくくなります。
「吐く」呼吸を意識することで、筋肉はより緩みます。
目的別の静的ストレッチ活用法


① トレーニング後の疲労回復
- 使った部位を中心にストレッチ(例:脚トレ後は下半身中心)
- 呼吸を深く行い、副交感神経を優位に
② 姿勢改善・肩こり解消
- 胸・背中・肩周りの筋肉を丁寧に伸ばす
- デスクワーク後に1〜2種目行うだけでも効果的
③ 睡眠の質向上
- 照明を落とし、リラックスした環境でゆっくり伸ばす
- 深呼吸を組み合わせると副交感神経が活性化し、眠りが深くなる
静的ストレッチを習慣化するコツ
時間より「継続」を重視する
1日5分でも構いません。毎日続けることで、柔軟性と回復力が確実に変化します。
ルーティン化のポイント
- トレーニング直後の“締めの儀式”にする
- スマホのリマインダーを設定
- 好きな音楽を流してリラックス
まとめ|静的ストレッチは“リセット”の時間
静的ストレッチは、筋肉と神経を整える「リセット」の時間です。
トレーニング後の数分を丁寧に過ごすことで、翌日の体が軽くなり、ケガのリスクも減ります。
ポイントをおさらいしましょう。
- 運動後・入浴後・就寝前に行う
- 痛気持ちいい範囲で20〜30秒キープ
- 呼吸を止めずにリラックスする
- 継続することで柔軟性・回復力が向上
“頑張った体を丁寧に整える時間”を習慣にすることで、
次のトレーニングの質が必ず上がります。
今日から、静的ストレッチで「動ける・休める」体を作っていきましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




